= 梅雨空だより =

         シリーズ№31



【夏期講習会における木山の漢文公式の効用

      とその得点寄与率の効果について】


( H23 東大・文理共通 古文問題 )


○ 人の習いにて、
思ひ立ちぬることをいさむるは、心づきなくて、〔中略〕
しかれば、
機嫌をはばかつて、やはらかにいさむべし

・傍線部ウ・カを現代語訳せよ。

 
ウの答→「自分が決心してやったことを人が忠告するのは、気に入らないことで」。「思ひ立つ」は直単A動12で「決心する」。「諫(いさ)む」は漢文公式漢単A14で「忠告する」。「心づきなし」は直単B形39で「不満だ・気に入らない」。

 
カの答→「相手の意向や心向きに遠慮して、やんわりと忠告するのがよい」。「憚(はばか)る」は漢単C53で「遠慮する」。「べし」は古文公式10適当の意で、訳は「~するのがよい」。


( H23 東大・文理共通 漢文問題 )

○ 贖
チテ ビテラシム (傍線e)

・傍線eとはどういうことか。簡潔に説明せよ。

 
→「子供が売っていた雁(がん)を代価を払って買い求め、空に放して逃がしてやったということ」。「購(あがな)ふ」=「贖ふ」は漢単A3で
「代価を払って求める」の意。


( H22 東大・文理共通 漢文問題 )

○ 「為
我 道 鸚鵡(おうむ=鳥) 甚 憶 二郎 」(傍線部E)を平易な現代語に訳せ。

 
→「私のために鸚鵡(おうむ)がたいそう二郎のことを思っていることを言ってくれ」。「道」は漢単A21で「いフ(言ふ)=四段活用」とあり、ここは文脈上命令形となるべきところなので、「道(い)へ」と読むのが正しく、また「甚」は漢単C52で「はなはダ」と読む副詞。「憶」は漢単A34で「おもフ(思ふ)」と読む「思ふ」系の難読語の一つです。

 以上、右に挙げたH23・22東大古文漢文問題において、解法の決め手となる「
諫(いさ)む」、「憚(はばか)る」、「贖(あがな)ふ」、「道(い)ふ」、「憶(おも)ふ」といった漢文語彙が、去年の夏期講習会の漢文関連のテキスト、「センター漢文」・「センター古文漢文」・「センター国語」・「東大漢文」・「早大‐ハイレベル漢文」・「東大古典」に共通して用いられている、テキスト末尾の漢文資料集に載せられているかといえば、唯一「道(い)ふ」だけが、付録S45ページの最上段に小さく載せられているのみで、他はまったく見いだすことができません。

 しかも、右テキスト類の授業形態は、大問演習が中心ですから、テキストの末尾に載せられた細かい語彙のチェックまでどれほど徹底してやったのか、常識的には大問形式である以上、そうした余裕はなかったのではないかと思われる点からも、唯一の「道(い)ふ」の得点寄与率の効果も判然としません。

 というのも、古漢語彙の知識が本番入試で力を発揮するためには、次の三つの要件が必要だと木山は考えているからです。

① 一つの知識を間をおきながら、何度も何度もくり返し、真迫力を伴って学生に問い続けたかどうかといったリピテーション(Repetition)の問題。
② 学生を講義の傍観者とせず、直接一人一人に当てて答えさせ、しっかりと暗記の定着を図ったかどうかという方法論の問題。

③ そうして積み上げられた知識の全体を、簡便な資料によって常に携帯し、模試や本番入試の直前にもさっと全体を見直すことができるといった、資料集としての見やすさ・覚えやすさの洗練の度合いといった問題。

 こうした要件を満たさなければ、全体としてかなりな数量にのぼる古漢の語彙知識のすべてを頭に入れ、かつ持続していくのは、なかなか難しいのではないかと思います。

 したがって、右に挙げた去年の夏期講習会の漢文関連の6冊のテキストが、H23・22東大入試の
解法に直接ダイレクトに得点寄与した比率というのは、かなり低いと言わざるを得ません。

 木山方式では、漢単ABCDの約200単語の意味・用法を、木山が黒板に直接漢字を書きながら、一人一人に当てて、その意味・用法・読み方を答えてもらうといったやり方をとっています。時間と根気のいる作業ですが、夏期の『サクセス!最強古文漢文』は、1日目から4日目の前半まで大問は一切やりませんので、相応の時間確保はできるものと考えています。

 少なくとも夏期講習会で漢文公式をゲットし、その漢文語彙の覚え方・狙われやすい意味や用法のポイントなどをしっかりと公式に書き込み学習することは、他に資料的な達成の方法がない以上、極めて有意義であろうと思います。


( H23 千葉大・教育 漢文問題 )

○ 其ノ 人 ② 無
之 何

・設問(一) 傍線部②を書き下し文にしなさい。

 
②の答は「之(これ)を奈何(いかん)ともする無(な)し」です。「奈何(いかん)セン」の形が上へ返読する際の読み方は、漢文公式14C⑤に(注2)として〝「いかん」から返読して上へ返るときには「いかんトモス」と読む〟とあり、また公式4①には「無 シ」に返るときは連体形で返るとありますから、さらに「いかん」が目的語をとるときは二字の間に入れるといったルールとも組み合わせて、「これをいかんともするなし」と読むことができるわけです。

 この「奈何(いかん)」から上へ返る形も、木山が黒板に書きながら一人一人の学生に当てて常にチェックする句形の一つです。しかも毎年かなりしつこくくり返しています。

 しかしながら、この句形は――近年では立教の文学部にも「無奈何也」(いかんともするなし)の読みの問題として出題されていますが――、にも関わらず代ゼミのすべての漢文テキストの参考資料集には、この句形は載せられていません。
 また、市販の漢文参考書の類いにも、これに言及する解説を木山はこれまで見たことがありません。

たとえば、手もとに2011年1学期「センター・私大漢文」のテキストなどを持っている人は、末尾の付録R20・R21の上段□ 11・12・13の項目をチェックしてみて下さい。そこには、「何如・何奈・何若(何が上)」と「如何・奈何・若何(何が下)」の用法の違いすらも載せられていません!

 この知識がしっかりと理解されていなければ、H22センター漢文問題の次のような問題が解けなくなってしまいます。


( H22 センター本試 漢文問題 )

○ 然 則 学
社 者 当 何 如 而 可 。

(ⅰ)書き下し文

① 然らば則ち社を学ぶ者は何れのごときに当たらばすなは而ち可ならんや。
② 然らば則ち社を学ぶ者は当に何如ぞ而ち可とせんや。
③ 然らば則ち社を学ぶ者は当に何れのごとくすべくんば而ち可なり。
④ 然らば則ち社を学ぶ者は当に何如なるべくんば而ち可なるか。
⑤ 然らば則ち社を学ぶ者は何如に当たりて而ち可ならんか。

(ⅱ)解釈

① それならば、杜詩を学ぶ者はいったいどのようであればいいのであろうか。
② そうではあるが、杜詩を学ぶ者はどうしたらいいのかわかっているのであろうか。
③ それならば、杜詩を学ぶ者はどのようなときに対処できるのであろうか。
④ そうではあるが、杜詩を学ぶ者は本当にどのようなことも可能になるのだ。
⑤ さもなければ、杜詩を学ぶ者はどのようなときにも実力を発揮できないのではないか。

 漢文公式14C③にあるように、「何如(何が上)」の読み方は
二通りしかありません。「いかん」と言い切りで読むか、「いかナル―体言/いかナル―ベシ」と読むかの二通りしかありません。

 問題の白文中には、「何如(何が上)」とあり、二点のつく上の「当ベシ」に返りますから、ここを「何如(いか)ナル→ベシ」の順番に読んでいるものは(ⅰ)の選択肢④の「何如なるべくんば」しかありません。「べし」を仮定形の「べくんば」で読んでいますが、とにかく論理的にこれしか適合するものはありませんから、④が正解となります。理屈がわかっていれば選択肢を見ただけでも正解を導くことができます。

 しかも、(ⅰ)の書き下し文が正しく選べれば、解釈の方は漢単D48
「可(か)ナリ→適当である・~するのが
よい」の知識から、(ⅱ)の答は①の「それならば、杜詩を学ぶ者はいったいどのようであればいいのであろうか。」が正解だとわかります。これで10点の得点です。いうまでもなく、センターにおける10点の影響は大きく、かつ漢文の10点は英語や現代文の10点よりもはるかに得点化しやすいと木山は思います。
 要はよき資料を持って、何度もくり返し地道にチェックし続けることです。

 ところで、すべての代ゼミ漢文資料、及び市販の参考書の類いにおいて、この「何如(いか)ナル体言」、「何如(いか)ナルベシ」の読み方の定式化をきちんと説明したものを、木山は今まで見たことがありません。句形としての定式化がないものを学生がいつの間にか知っているということはあり得ないことです。つまり現実的には、正答するにせよ、間違うにせよ、要は皆かなり勘に頼りながら解いているのが実情だと思います。


( H23 筑波大学 漢文問題 )

○〔国民の窮状と政治的な弊害を改革するために、皇帝がその問題解決の方策を諸々の臣下に考えさせ、意見を求めるといった文脈で〕

 (2)宣
百 寮(ひゃくりょう) 各 陳 意 見 以 革 其 弊

・傍線部(2)を書き下し文にせよ。

 答は「宣(よろ)しく百寮(ひゃくりょう)をして、おのおの意見を
陳(の)べて以(もっ)て其(そ)の弊(へい)を革(か)へしむべし」となります。これは漢文公式11Bにある使役形の連用中止法の典型的な出題例です。(連用中止法の考え方は、木山のホームページ上でも公開しています。)

 この場合、使役の助字「令(し)ム」の下が「各(おのおの)意見を陳(の)ぶ」という一文と、「其(そ)の弊(へい)を革(か)ふ」の一文が、接続詞の
「以て」(そして・そこで)でつながっていますから、二連文になっていることがわかります。この場合、漢文公式19使役の 注 にあるように、使役の助字の下に動詞が連用し、連用中止に読む場合は、最後の動詞以外は「~シム」と読まず、
連用形または連用形+テでよむのがルールですから、最初の動詞にあたる「陳(の)ブ」を「陳(の)ベテ」と送ることが書き下しのポイントです。

 連用中止法は、H18・19・20の3年間連続してセンター本試の漢文白文問題に出題されました。数年前からホームページ上でその考え方を公開しています。もちろん木山が考案した句形ですから、代ゼミの漢文資料集には載っていません。


( H22 早稲田・人間科学 漢文問題 )

○〔荘子が使者に答えて言った。「あなたはいけにえの牛を見たことがあるか。いけにえにされるまでは~」〕

 衣 以 文 繍、食 以 芻 菽 。

(注)文 繍(ぶんしゅう)…刺繍した美しい布
芻 菽(すうしゅく)…上等な飼料

・返り点の付け方として適当なものを選べ。

イ 衣
以 文 繍、食 以 芻 菽
ロ 衣
文 繍、食 以 芻 菽
ハ 衣
以 文 繍 、食 以 芻 菽
ニ 衣 以
文 繍 、食 以 芻 菽
ホ 衣
以 文 繍、食 芻 菽

 これも木山が創案した句形の一つです。H16のセンター漢文にこの形が白
文問題として出題されたときに定式化を考えてみました。漢文公式8の③に「勉 強 以 参 考 書 =勉強
するに参考書を以てす」の例文とともに解説
を載せています。

 正しい読み方は「衣(ころも)
するに文繍(ぶんしゅう)を以てし、食(しょく)
するに芻菽(すうしゅく)を以てす」です。したがって答はニです。もちろん「早
大‐ハイレベル漢文」には載せられていません。


( H23 早稲田・文化構想学部 漢文問題 )

○ 是 二 人 、5 未 始 不 相 須 也

・傍線部5の意味として適当なものを選べ。

イ はじめから互いに相手を必要としているのです。
ロ はじめから互いに相手を必要とすることはないのです。
ハ はじめから互いに相手を必要としてはならないのです。
ニ はじめから互いに相手を必要とするに及ばないのです。
ホ はじめから互いに相手を必要とするのが当然だと考えるものです。

 漢文公式7再読文字⑧の「須」(すべかラク~ベシ)から左枠外側に出ている破線の先の*印には、⑧には「不
須(もち)ヒ ―― 」の形で(~する必要はない)の用法もあると書かれています。また、公式12B④*には、「ず」から直接「ず」へかえる時は「~ずンバアラず」と読むとあって、これらのルールによれば読み方は「いまだはじめよりあひもちひずんばあらざるなり」となり、訳は「いまだはじめから互いに相手を必要としないわけではない→必要としている」となって、答はイとなります。

この知識については、どこかの参考書には載っているかもしれませんが、木山方式のように黒板に「須」の字を書いて、〝これを再読文字ではない「不
―― 」の形で読むとどうなりますか?〟などと直接当てられて答えてもらう訓練を十分に積まなければ、なかなか試験場で即座に使えるレベルにはならないのではないかと思います。

その他、H23早稲田・政経・教育・法学部、H23立教の文学部など、今年も木山の漢文公式からの出題はかなりありましたが、挙げていけばきりがありません。

とにかく、ふだん木山の古文クラスで学んでいる学生さんは、できる限り夏期講習会において、木山の漢文公式のやり方を学んで、2学期以降の模試対策に役立ててほしいと思っています。


                  


一年間ありがとうございました。浪人の一年間において古漢公式の力は大きかったと感じています。とくに古文漢文の時間が最小限ですんだので、すべての教科につなげることができたことが一番の利点でした。本当に信じてよかったです。       〔早稲田大学・商学部・文化構想学部 合格〕

無事に第一志望に合格できました。約一年間古文漢文公式を通して教わったことの成果を発揮できてほんとにうれしいです。ありがとうございました。大学にいっても浪人の一年を無駄にしないよう頑張ります。
                   〔千葉大学・教育小学校国語 合格〕

前略。先生の京大古文を昨年度札幌校で受講していた者です。何とか無事京都大学理学部に合格できました。ありがとうございました。正直最初は〝なんだこの先生?!〟と思いました。しかし、ホームページ上などの記事を読んで、言ってること自体は間違っていないと思ったので、一年間ずっと単語のみをやり続けました。結果的に理系の僕には逆に楽で有り難かったです。
                      〔京都大学・理学部 合格〕

あまり基礎ができていなかったので、単語と文法の暗記から始める木山方式はとてもためになりました。すべて覚えるのには時間がかかりますが、
覚えてしまえば、その後にすべきことはあまり多くありません。受験生にとってはつらいことも多い一年になると思いますが、今やっていることが来年の成功につながるのだと意識して、最後までやり遂げて下さい。

                      〔京都大学・理学部 合格〕

最初は怖いと思いますし、授業が嫌になると思いますが、夏あたりまで我慢してやっていれば、模試等で驚くほど効果を実感できます。あとは怖いでしょうが、前の方に座って当てられる方がやっぱり伸びます。当てられないときでも自分が当てられてるつもりで口パクでもいいので答えてみると違うと思います。              〔中央大学・法学部 合格〕

 

                    
もどる