彼らの理想世界は上代の『古代的素直さ』、あるいは、中古の『雅(みや)び』という幻想の中にあったわけですから、江戸時代の日常は薄汚れたものに感じられたに違いありません。
しかし、貴族文化はとうの昔に滅び去り、歴史の上では二度と返り咲くことはありませんでした。そんな中で、古代の「まことの心」や中古の「もののあはれ」に憧憬を抱けば抱くほど、その古代の精神世界と一体化したいという欲求が高まります。その際、右の私の写真にあるような平安貴族の衣装を外形的に真似しようとするのは、皮相な低レベルの模倣にすぎません。